トラが保護施設に連れてこられた、その少し前のこと。もう一匹の子猫が、全く別の場所で懸命に生きていました。
第4話 クロとお母さん

サバトラの男の子・クロは、茶トラのお母さんと2匹で暮らしていました。
兄弟たちは飢えで次々と亡くなり、残ったのはクロとお母さんだけ。食べ物を求めてさまよう毎日が続きます。

ある日、やっとほんの少しの食べ物を見つけました。お母さんはその食べ物をクロの前に差し出します。
「でもお母さんは?」
お母さんは静かに答えました。「あなたは生きなさい」と。
クロは泣きながらご飯を食べました。そばでお母さんは、満足そうに目を閉じました。クロは泣きながらお母さんにすがりました。クロは一人ぼっちになりました。


一人になったクロはゴミ箱を荒らして食べ物を探し続けます。怒った人間に捕まってしまいますが、その人はクロを丁寧に扱い、保護施設に届けてくれたのです。
クロは人間をとても怖いと感じるようになっていました。施設に着いても、壁のすみっこで小さくなっていました。
そのとき——向かいのケージで、一匹の茶トラの猫と目が合いました。